世界で一番欲しいもの

電車に揺られている。

世界で一番欲しいものを友人が手に入れた。
近くにいる友人だ。大好きな友人。嬉しい。妬ましい。嬉しい。妬ましい。

昨晩から沈んでいる。ぼんやりしている。

友人たちに会うため電車に乗っている。
今日は天気が良くて19時を過ぎても暖色という言葉が似合う夕日が車内に差し込んでいる。
「君っていい匂いだ」と抱き合えばお約束のように言ってくれる男の子について想った。それは唐突で、シャワーを浴びた自分の髪の毛が顔に触れたことでも関係あったのだろうか。気持ちがまるく、軽くなる。

この男の子は私が欲しいものを手に入れた友人と同一人物だった。
私がここ22時間近く塞ぎ込んでいる発端の友人とこの男の子は異なる人格のように私の脳裏に浮かんだ。ぼんやりとそれってどんな香りなんだろうと思ったあと、あれ同じ人だなあと思った。

妬ましくて情けなくて羨ましくて苦しくって不安な自分と彼を祝福し誇らしく嬉しく世界に自慢したい自分の分離を認めるためかのように、私の肩に頭を乗せ香りを褒める彼はひらりと登場し去った。


とか打っていて友達と合流したら憂鬱が全て吹き飛んだ。
生きてこうね。弱い自分、余りある情けなさも抱いて生きてこう。